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歴史上、日本の宗教組織が発達させてきた呪術・祈祷・治療行為については、多くの先行研究があるが、民間レベルでの同様の行為についての分析は殆どなされていない。本研究は、江戸時代の民間信仰である富士信仰において発達した呪術・祈祷・治療行為の、広範なあり方を分析し、これらの行為を、富士信仰が民間レベルで発達させたより大きな思想の枠組みの中に位置づけるものである。本研究により、民間レベルで現実世界がどのように理解されていたかを示す指標として、これらの行為を定義することができる。またこの分析を通じて、現実界としての宇宙、地理的世界、身体観など、様々なレベルでの現実世界に適用される複雑な象徴的・解釈学的枠組みの中に、こうした呪術・祈祷・治療行為を位置づける事が可能となる。 |