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器械運動は「できる・できない」がはっきりしており、最初の基本技で躓けば、その後、同じ技の学習を繰り返し失敗することになる。そのため、これまで多くの研究者たちによって、器械運動に必要とされる教授技術に関する研究や、下位教材の開発が行われてきた。しかしながら、有効であるとされる下位教材を単に提供するだけでは不十分であり、教師は、それぞれの下位教材が有する意図や特性、更には、その意図や特性に沿った指導を適切に行う能力、即ち、教材解釈力が重要であることが岩田によって指摘されている。 そこで本研究では、特に器械運動の開脚跳びに関わって開発された下位教材群を提供し、教師の教材解釈力や指導技術が児童の学習成果に及ぼす影響を明らかにすることとした。 データの収集及び分析に際し、本研究では、教師の教材解釈力が直接評価できないため、?フィードバック、?下位教材の与え方、?下位教材の学び方の説明の3点から、教師の指導行動を分析した。また、教材解釈力や指導技術が特に要求される運動技能の低い児童(下位児童)を調査・分析対象とした。 本研究の結果は、以下の通りである。 (1)教師は単に多くのフィードバックを与えるだけでは、下位児童の学習には効果的ではなく、適切で具体的なフィードバックを与えることが、学習成果に影響を及ぼすことが示唆された。(2)有効であるとされている下位教材群を単に提供するだけでは、不十分であり、教師は、児童が基礎的な運動感覚を身につけるために必要とされる課題提示と、運動感覚が身に着くまでの十分な時間や練習量を保証する必要がある。(3)下位教材の提供に際し、下位児童に対しては、特に、課題の選択を丁寧に指導する必要があり、学び方に関する指導の徹底が重要であることが示唆された。つまり、児童の躓きを正確に把握し、用いるべき教材・教具を適切に提供することが求められる。 以上のことから本研究では、教材解釈に基づく教師行動が、児童の学習成果を保証していくうえで重要であることが明らかとされた。 |