指導要録は、外部への証明機能,及び指導に生かす機能を有するように設定されているが,それらが,実際にどのように働いているのかは,明らかにされていない.つまり,外部への証明機能を強く有すると考えられる「評定」欄,及び,指導に生かす機能を強く有すると考えられる「観点別学習状況」欄が,指導要録の有する2つの機能を十分に,あるいは,どの程度果たしているかどうかは,明らかでない。 そこで本研究では,学校現場における指導要録の活用の実態,及び,課題を明らかにすることを目的とした. 本研究の対象は,滋賀県内及び大阪府(高槻市及び茨木市)の小学校に勤務している現職教員であった。対象者には、?.所属等に関する内容,?.指導要録の閲覧状況等に関する内容,?. 「観点別学習状況」欄及び「評定」欄の活用時期と活用内容についてアンケート調査を行った.アンケートの分析には,IBM SPSS Statistics 20を用いた.外部への証明機能及び指導に生かす機能について,「観点別学習状況」欄及び「評定」欄の活用状況から,それぞれにカイ二乗検定を行った. 得られた主な結果は以下の通りである。小学校教員は,外部への証明機能として,「観点別学習状況」欄及び「評定」欄を活用していないと認識していた.その一方で,指導に生かす機能として,「観点別学習状況」欄を活用している,と意識していた。このことから、現職教員の指導要録(「観点別学習状況」欄や「評定」欄に対する意識が変わってきていることが明らかとされた。