1.時間的演算機構を持たない素子の妥当性
神経細胞内の状態は発火と共にリセットされると考えたとき、細胞内で行われる時間的な演算の効果が出力のスパイク統計に影響を及ぼしているかどうか調べた.サル前頭前野から観測されたスパイクデータについてこの分析を行い、細胞内で行われる時間的演算の効果が現れていないことを示した(Sakai,2001).この結果は、対象とした神経細胞が時間的な演算を行わない単純な素子で記述可能であることを示唆している.
2.神経細胞集団の連鎖を安定に伝播する様々な発火状態
各神経素子として、上記のような時間的演算機構をもたない単純な素子を考える.順方向に結合した神経素子集団の連鎖を考え、その連鎖を安定に伝播する様々な集団発火状態について解析した.自明な安定状態、すなわち全素子が発火しない状態や全素子が常に発火している状態を除き、安定に伝播する集団発火状態は1つであることがわかった.その安定に伝播する集団発火状態と回路特性を表すパラメータ(興奮・抑制バランス、結合率など)との関係が導びかれた.