久賀島の細石流教会堂と上海土山湾工房の彫刻
―長崎の教会堂における建築装飾の象徴的意味について―
小倉康之(玉川大学)
建築分野(7月)と彫刻分野(本年11月)の2回に分け、細石流教会堂の建築装飾と上海土山湾工房の彫刻について、図像学と様式史の方法論に基づいて考察する。7月の口頭発表では、細石流教会堂の復元的考察を行い、建築装飾のシンボリズムに関する仮説について述べる。その上で久賀島潜伏キリシタン資料館所蔵、上海土山湾工房の彫刻について、9月に現地調査を行い、歴史上の定位と造形上の特質を明らかにしたい。
久賀島(長崎県五島列島)に建設された細石流教会堂は、木造、三廊式、T字型プランの建築であり、折上天井と植物モティーフ(花柄・葉飾り)の建築装飾を特色としていた。鉄川与助の設計・施工により、1920年頃に竣工したが、1969年に廃堂となり、現存しない。本発表では、細石流教会堂とよく似た中ノ浦教会堂(五島列島・中通島、1925年献堂)と比較しながら、写真などの画像資料に基づいて考察する。
鉄川与助や久賀島の信者が上海土山湾工房の彫刻をどのように受容し、それは建築の空間構成および装飾プログラムとどのように関わっていたのかを明らかにすることが本研究の目的である。