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The Vanishing Point - Ontologies of the Miraculous. Zeami’s Noh Performer and Grotowski’s Laboratory Theatre
この論文では、演劇上演における、俳優と観客双方にとって奇跡的に素晴らしい「ミラキュラス」な概念に関する存在意義と、それに作用する不確かな要素を精査するよう試みた。そのために、世阿弥元清の能楽論とグロトフスキの実験演劇を範例として取り上げ、最高水準の芸を保つために頂点を目指して鍛錬し続けた世阿弥が、「能役者の芸」を「花」という比喩で表わしたことに注目した。また、能役者は哲学的な原理に基づいて、ひとつ上の芸域へ飛び越えるための現実と想像上の境界線を作りだす。その哲学的原理で自分自身を非常に厳しく制約することで、精神的にも肉体的にも人間能力の限界を超えさせて「ミラキュラスな瞬間」に到達させる。世阿弥元清の能楽論とグロトフスキの実験演劇は相関関係を持たない別個のものとして捉える一方、存在意義の特定の見解が理論的枠組みを越えて各範例に適合しているか否か、慎重に検証する。 |