振り子の学習は,内容の定着が悪い単元とされる。その要因として,数値処理の問題が指摘されている。本研究は,平均と誤差の認識に着目し,数値の処理が数値比較の判断に与える影響を検討した。その結果,各条件の複数の数値を直接比べた時は,平均をして二つの値を比べた時よりも,誤差を認識しやすいことが明らかになった。平均をせず複数の測定値を併記することで,標本分布の分散が把握できた可能性が高い。これが,誤差の認識を向上させた。一方で,平均することで値が2つに代表されたことで,値を算出する前にあった標本分布の分散を意識しにくくしてしまったと推測できる。また,振り子の学習において平均をしないことは,平均した場合に比べ,既有概念を科学概念に変容させやすいことがわかった。誤差を認識することで,適切な判断が可能になったためと推測できる。