結晶分化作用は高等学校地学Iにおいて扱われ,火成岩の多様性とその成因を理解させる点で重要な学習内容である。しかし結晶分化作用は生徒にとって理解に困難を伴う場合が多い。そこで結晶分化作用の理解を深めるために正累帯深成岩体における火成岩標本の観察に加えて,先輩のコンセプトマップ(本論では「一人のコンセプトマップ」と呼ぶ。)を提示し,話し合う活動を導入した。「一人のコンセプトマップ」を使った実験群と統制群に分け,その有効性を検証した。その結果,実験群において5%の危険率で「分類の概念」が有意に減少し「成因の概念」が有意に増加することから,結晶分化作用の理解を進めるために有効な教材であることが明らかになった。また,生徒の会話のプロトコルから観察における生徒どうしの会話が概念形成に影響することが示唆された。