本研究では,積水ハウス株式会社とマリオット・インターナショナルが2020年にスタートさせた地方創生事業,「Trip Base 道の駅プロジェクト」を調査対象に,地域における観光振興拠点としての「道の駅」の可能性について分析した。プロジェクトの実態を把握するため,事業運営に携わる積水ハウス株式会社とマリオット・インターナショナルの事業担当者に聞き取り調査を行った。また,ホテルの開業が道の駅にどのような影響を与えているのかを分析するため,該当する道の駅へのアンケート調査と,ホテル支配人への聞き取り調査を実施して,観光振興のハブとしての道の駅の可能性を考察した。
調査結果から,道の駅は単なる休憩スポットや地域産品の販売場所としての役割を超え,地域の観光振興,農水産業の支援,知名度の向上,情報発信基地としての役割を果たしている。そして,国際基準のホテル開発は,道の駅の来客数や売上の増加,地域内の雇用創出,地域産業の振興にプラスの影響をもたらしていることが分かった。
一方で,立地条件がビジネスに大きな影響を及ぼすホテルの事業面では,道の駅の立地環境は決して好条件にあるとはいえず,稼働率を高めることが喫緊の課題となっている。そのため,道の駅の将来の発展に向けては,デスティネーション・マネジメントを通して,地域内の産業共生を創造し,地域内経済循環の向上を図ることが必要不可欠といえよう。