タイではコロナ禍の2022年に、アフターコロナに向けた新たな観光戦略を取りまとめ、これまでの外国人観光客数に重点を置いた数の戦略から、観光客の滞在日数や観光収入、SDGsとの連動に重きを置いた戦略へと視点を変えた。①回復力のある観光、②質の高い観光、③観光体験、④持続可能な観光、の4つを核に観光・観光産業の再構築を目指している。
そして、新たな戦略における地域の観光振興策として重視しているのが、地域のコミュニティが主体となって観光地域づくりを進めるCBTの強化である。持続的観光特別地域開発管理機構(DASTA)が主体となり、タイ国内に9つの拠点を設け、地域コミュニティの再生、地域ならではの滞在型観光の促進、地域内経済循環の構築に向けた直接支援が進められている。
そこで、本研究では、DASTAが進めるCBTの取り組みについて、DASTA本部とタイ北部ナーン県の事務所への聞き取り調査、現地調査をもとに、CBTによるコミュニティ再生と地域内経済循環の構築の実情、さらには、官主導のCBTと民主導のCBTの取り組みの状況の調査結果について報告した。