近年、タイはインバウンドで注目を集めており、国際観光客到着数、国際観光収入でも日本の上に位置する。そこで、本研究では、なぜタイが観光分野で成功しているのか、そして、日本の観光政策や地方自治体の取り組みと何が違うのかについて分析することを目的とした。タイでは現在、「第2次国家観光開発計画(2017~2021)」に基づき、観光振興策が進められている。2017年から2021年までの5年間の目標を、①質の高く競争力のある観光地、②国内観光の推進による国際観光とのバランスの強化、③観光収入の全国への分散化、④持続可能なタイらしさと環境の発展、という4つの視点から5つの戦略と55対策のフレームワークで設計されている。本研究では、この観光開発計画と日本の観光政策との違い、そして、観光地づくりの面で大きな役割を担っているDASTAの取り組みとタイ北部のナーン県の観光振興に焦点を当てる。タイの観光計画と施策の特徴、かつて王朝があった古都の魅力を活かして観光地域づくりが進められているナーン県の観光レポートやDASTAで同県の観光開発に関わった所員などへのヒアリング調査をもとに、タイと日本との観光政策、そして、地域の観光振興の相違点を考察した。