チョウノスケソウ(Dryas octopetala sensu lato)は周北極植物の一種であり,高緯度北極ツンドラから中緯度高山にかけて幅広く分布し,個体群間で葉特性に変異が見られる.本研究は,チョウノスケソウの北限域と南限域の個体群において,葉形質と光合成特性を比較し,それらの諸形質に見られる個体群変異を明らかにすることを目的とした.北限域に当たるノルウェーのスバールバル諸島・ニーオールスン(北緯78°,高緯度北極ツンドラ)における関川ら(2016,ESJ63,P2-105)のデータと,南限域に当たる日本の北アルプス・立山(北緯36°,中緯度高山)のチョウノスケソウ個体群におけるデータを比較した(LMA,葉N,最大光合成速度(Amax),暗呼吸速度(Rd),光合成速度のCO2濃度依存性).得られた結果から,北限域と南限域のチョウノスケソウ個体群の生理生態学的形質には,葉フェノロジーに起因する変異が見られた.