ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』を教育的知の保存庫として解読することを試みた。本編では「聖ヨゼフ二世」物語に示された人間形成のプロセスの問題を取り上げ、人間形成のプロセスを像の模倣過程として主題化した。予像(模範像)は身体を経由して受け取られること、像の受容はミメーシス的能力の助けを借りて行われることが強調される。人間形成においては、予像と後像(模像)の一致への努力が行われるが、それは常に像への同化の過程であると同時に差異化の過程という両価性を止揚できないということ、さらには像が他者として比喩としてのみ感知されるものであることが示唆される。