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全人思想への問いはこれまではむしろ語られたもののフレーム内で応答された問いであった。しかしこうした扱いでは全人概念が言語的に規定される際の拘束性という問題が依然として放置されたままである。これは結果として全人思想の含蓄深い点を見えなくさせていくことにもつながっていく。本論文では、小原國芳の全人思想が歴史的人間学の始点から再検討される。その際、これまでの研究で言及されることの少なかった全人概念の規定の問題を経由して全人思想の歴史性が強調される。このことによって確認されることは、単にこの思想の現れが歴史的であるということだけではなく、全人思想が生来内包する解釈の多様性が保証されもし、また許容されもするということである。 |