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アン・タイラーとエリザベス・ストラウトは現代アメリカを代表する作家で、平凡な日常生活の奥にあるものを洞察する作風で知られる。いずれも2020年のパンデミックを背景にした小説を2022年に発表した。双方ともにパンデミック下の家族を描いているが、その視点は異なる。Tylerは一人の人物の視点と経験により、パンデミックでさまざまな対応を余儀なくされながらも、歴史的・社会的変化が起こる渦中で継続性を発揮する家族の本質を示している。StroutはTylerよりも社会性が強く、現代アメリカに見られる社会的・経済的・地理的な分断への関心が作品のプロットに直接的に反映されている。パンデミックから逃れてニューヨーク市からメイン州に移住した語り手の視点は、個人が歴史や社会から受ける大きな影響を直視しながら、家族の在り方を模索する。感染拡大期の不安を背景に、いずれの作家も家族が家族として生き続ける希望を提示している。 |