ヒキガエルは人家の庭先や校庭の植込みにも住み着いている身近なカエルである。高校生物でも、『動物の発生』の代表例としてほとんどの教科書や資料集で扱われている。今日ではアフリカツメガエルが発生研究のモデル動物となっているが、発生教材としてのヒキガエルの魅力も捨てがたい。ところがヒキガエルの繁殖期はとても短く、一年のうちわずか数日、長くても一週間ほどしかない。夜中に産卵することが多いので、受精卵や卵割の進んでいない若い胚を野外で採集するのはとても難しい。運よく採集できても胚は休みなく発生し続けるので、授業時間内で生徒に観察させることはほぼ不可能である。教科書や資料集では写真や断面図を使って詳しく解説しているが、やはり実物を観察することが時間的・空間的に変化する発生の過程を理解する上で重要だと考える。本研究では、実物のヒキガエルの胚や幼生を材料として、受精卵がカエルへ発生していく全過程の標本化を試みた。昨年度の熊本大会では、変態直後の幼体の透明骨格標本を市販のUVレジン(紫外線硬化樹脂)に埋め込んだ“樹脂包埋標本”とその作製法を紹介した。発生過程についても、樹脂包埋標本があればいつでも観察できる。胚や幼生をいろいろな方向から観察でき、半分に切断した胚を埋め込めば内部構造の観察もできる。実際の時間経過を捉えることは不可能だが、発生の順序を理解するには大いに役立つであろう。