近年、日本では「人とペットの共生」という概念が注目を集めている一方で、ペットと人との間に生じる多くのトラブルや対立を伝える報道も数多く見られる。本稿は、2022年に都市部で筆者が実施した27件の質的インタビューおよび参与観察に基づき、日本のペット産業に関わる当事者が経験したトラブルと、それらの問題を解決するために取られた行動を明らかにする。
当事者が示した、それぞれの分野における他のアクターとの関わりは、大倉(2020)の提唱する「エンゲージメント(関与)」という概念と共鳴するように見える。しかし、日本の事例を十分に捉えるには、エンゲージメントという実践だけでは不十分であった。というのも、日本のアクターの一部は、問題状況に深く巻き込まれた場合には、そこから「退出する」必要性を主張していたからである。
さらに、この解決策は、猫や犬が一般的に自分の嫌なものから距離を取ろうとする傾向がある、という複数の調査対象者の指摘とも整合的であり、妥当なものとして示された。結論として、本稿は、現代日本における人とペットの関係が、人間と動物という存在の非対称性を基盤として成り立っていることを明らかにしている。