講演・口頭発表等

基本情報

氏名 工藤 亘
氏名(カナ) クドウ ワタル
氏名(英語) KUDO Wataru
所属 教育学部 教育学科
職名 教授
researchmap研究者コード 5000064718
researchmap機関

タイトル

玉川大学大学院でのファシリテーター養成の取り組み ― 指導と支導ができるファシリティーチャーを目指して ―

講演者

工藤亘

単独・共同の別

単独

会議名

日本教師教育学会第36回大会

発表年月日

2026/09/26

開催年月日(From)

開催年月日(To)

査読の有無

無し

招待の有無

無し

記述言語

日本語

国・地域

日本

会議区分

国際共著

会議種別

主催者

日本教師教育学会

開催地

広島大学

URL

形式

無償ダウンロード

概要

はじめに.
文部科学省は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(令和3年答申)で、子ども達の可能性を最大限に引き出すため、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させることを掲げ、一斉指導による知識伝達だけでなく、子ども達が自ら問いを立て、他者と対話しながら納得解を見いだす主体的・対話的で深い学びの実装が不可欠と示した。2021年、「教師に求められる資質能力の再整理」では、多岐な場面で教師がファシリテーション能力を発揮することが期待されている。しかし、ファシリテーションについて学べる大学や大学院は限定的であり、それが現状かつ課題でもある。*ファシリテーションの定義「知的・情緒的相互作用を支援・促進する働き」(工藤,2012)
1.指導と支導のバランスがよく実践できるファシリテーター
玉川大学大学院では、2020年に大学院共通科目「ファシリテーターとしての教師の技術と実践A・B」(合計8日間)を開講し、「指導」と「支導」(工藤,2012)のバランスがよく実践できるファシリテーター=「ファシリティーチャー」(工藤,2026)の養成に取り組んでいる。「指導」とは、教師が目的をもって学習内容や活動の方向性を示し、知識や技能の習得を直接的に働きかけである。「支導」とは、学習者の主体性と目標を尊重し、対話や協働を通しての学びを促進し、成長を後押しする関わりを指す。現代社会では予測困難な課題に対応する力「自己冒険力」(工藤,2017)が必要であり、その育成には学習者自身が考え、判断し、行動する経験が不可欠である。そのため教師には、教える力だけでなく「TELができる環境」(工藤,2026)を整え、学びを促進する力が必要とされ、この両者を統合した教師像が「ファシリティーチャー」である。
2.ファシリティーチャー養成プログラム
養成プログラムでは、ティーチング・ファシリテーティング・コーチングの違いを理解しながら、ファシリテーションの理論と実践を体系的に学んでいる。具体的には、集団形成やコミュニケーションの理論、目標設定と振り返りの方法、対話を促進する技術、学級経営や授業づくりにおけるファシリテーションの活用などを扱っている。また児童生徒の発達段階や状況を見極め、指導と支導のバランスを考慮しながら「ガードレールの幅とファシリテーションの力量」(工藤,2026)を当意即妙で調整する必要性について学んでいる。そして単なる講義形式ではなく、参加型・体験型学習を重視し、受講者自身は体験(実践)と理論を往還・統合しながら学ぶ構成となっている。
3.Tamagawa Adventure Program(TAP)
養成プログラムの中核を担うのが、玉川大学TAPセンターが展開するTamagawa Adventure Program(TAP)である。TAPはアドベンチャー教育の理念を基盤とし、仲間と協力し課題解決に取り組む体験活動を通して、自己理解や他者理解、信頼関係の構築を促進する教育プログラムである。参加者は活動を振り返りながら学びの意味を言語化し、自らの教育実践に結び付ける力を養っている。このプロセスを通じて、教師は学習者を支援・促進する立場を体験的に理解し、実践的なファシリテーション能力を高めている。
4.学級ファシリテーター資格制度
玉川大学大学院では「学級ファシリテーター資格制度」を設けている。所定の科目履修と評価を通して専門的な能力を認定し、世界共通の技術標準規格で証明するデジタル証明書「オープン・バッジ」を授与している。この制度は、教師としての指導力に加え、学習集団を支援し、成長を促す力を客観的に示すものであり、学校現場における実践力の向上につながっている。
5.おわりに
玉川大学大学院のファシリテーター養成の特徴は、「指導と支導」を相互に補完し合うものとして位置付けている点にある。教師には必要な場面では方向付けを行いながらも、学習者自身が考え、対話し、協働する機会を保障することが求められる。玉川大学大学院では、体験(実践)と理論を往還・統合しながら、認知徒弟制を用いたファシリテーター養成を行い、学習者中心の教育を実現できる教師の育成を目指している。ファシリテーション能力を備えた教師の養成は、主体的・対話的で深い学びの実現に寄与するとともに、「学校教育でのファシリテーション・サイクル」(工藤,2021)の実現に向けた取り組みでもある。

備考