『枕草子』「清涼殿の丑寅の隅の」章段は、従来『古今和歌集』との関係から論じられたが、本稿では当時の和歌や『伊勢物語』を間テクスト性の観点から論じた。冒頭の「おそろしげなる」絵を〈笑ひ〉へと導く背景には当時の「うしとら」歌の存在を考慮すべきであり、続く叙述には『伊勢物語』一〇一段が想起される。『伊勢物語』の語りを『枕草子』の当該部分に照射すること、つまり間テクスト性の問題として読み直すことで詠歌の折を基準に『枕草子』の特徴を理解することができる。ここに和歌に収束した『伊勢物語』の散文と、和歌には収束せずに拡散した過程を経て和歌に到達した『枕草子』の位相差を読み取ることを指摘した。