本書は、ドイツの教育政策の分析を中心として、教育政策の今日的特徴を明らかにすること、それによって、日本の教育政策への示唆を引き出すことを目的とする。
1980年代に入ると、市場原理による競争と、民間活力の活用による歳出の削減を行う、いわゆる「NPM(New Public Management)」による国家システムが構築されていった。日本やドイツでは、経済成長が持続していたためその導入が遅れたが、ドイツでは1990年の東西ドイツの統一によって、日本ではバブル崩壊による平成の大不況によって、国家支出の削減による財政赤字を圧縮する必要が生じた。各国では、教育等の領域でも一律に資源を投入するのではなく、教育政策に対する費用対効果が問われることとなった。
成果指向的な制御のための教育行政手法は、①学校査察や学校外部評価、②統一修了試験、③教育スタンダード、④学習状況調査、⑤学校プログラムである(Fuchs 2009, 373)。
第1章は、ドイツが2001年の「PISAショック」以降、KMKや教育フォーラムが教育改革の方向性を示したことを提示した。
第2章は、ドイツの就学前教育段階と初等教育段階の教育政策に焦点を当てた。2001年の「PISAショック」によって、低学力層の底上げを目指し、終日学校とドイツ語習得支援を重視したことを示した。
第3章は、前期中等教育段階で教育の機会均等と、教育の質保障を両立させるために、伝統的な三分岐型学校制度を二分岐型学校制度へと転換していったことを明らかにした。
第4章は各学校の教育成果を外部評価による学校改善を進める過程を明らかにした。
第5章は教員の質保証に関わる政策について、ドイツはモジュール化と理論と実践の相互作用を促す学修課程を推進した。