目的】我々は、木質バイオマスを再生可能エネルギーとして活用するために、湿式ミリング法によ
り前処理した木質バイオマスのメタン発酵プロセスを開発している。本研究では、福島県内に木質バ
イオマスをエネルギー資源として活用するための湿式ミリング-メタン発酵実証プラントを設置し、
安定した連続メタン発酵条件の検討、および様々な木質バイオマスを原料とした発酵試験を行い、今
後の実用化に向けた基礎データを収集した。
【方法・結果】
福島県内に設置した実証施設において、水処理施設より供与された高温嫌気消化汚泥を微生物源と
して、容量 500L の発酵タンクを用いた連続メタン発酵処理を行った。約 180L の嫌気消化汚泥に湿式
ミリング法で処理したスギ心材スラリーを逐次投入することなどにより馴養を行った。スラリーの投
入を始めて発酵液容積が 300L に達した時点で、1 日当たり 1kg を処理したスラリー約 10kg を投入し
てメタン発酵を行う、水理学的滞留時間(HRT)30 日の連続運用に移行した。ここで、ラボ試験での
成果を基に窒素源、微量金属を添加した。
連続発酵試験以降、バイオガスのメタン濃度は 50%~65%を継続的に記録した。しかし、徐々に pH
が低下し、連続発酵試験後 2 ヶ月半程経過した時点で、pH が急激に低下するとともに、有機酸が顕著
に蓄積した。本結果から、試薬のみによる栄養源の添加では、安定したメタン生成には不十分である
と判断した。そこで、補助栄養剤として無機添加剤に加えドッグフードを添加したところ、4 ヶ月間
にわたりメタン生成に成功したことから、木質スラリーの安定したメタン発酵には、複雑な栄養要求
性を解決する必要があることが分かった。
そこで、ミリングスラリーに対して無機添加剤とドッグフードを加えた条件を標準として、福島県
内で採取したスギ心材やバーク、アカマツ、コナラ、そしてこれら複数樹種の混合物を原料とする連
続メタン発酵試験を行った。その結果、いずれの原料においても、良好で安定したメタン発酵を安定
して継続できた。このことから、湿式ミリング処理は、福島県内で主に発生する木質のバイオマス資
源について、広範に処理が可能なシステムとして期待することを示すことができた。
本研究成果は、平成 27-28 年度福島県 委託事業「メタン発酵による木質バイオマス活用実証事業」
で得られたものである。